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NPO法人まーぶるは、障がいとともにある方々への支援を総合的に行ってます。
ホームヘルパー派遣事業(居宅介護、重度訪問介護、行動援護、移動支援)、
通所事業(デイサービス)、入所事業(ショートステイ)
また、二条で重症心身障がい児放課後等デイサービスも行っています。
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まーぶるコラム 第11回

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寒くなったり、暖かくなったり。ころころと変わっていく気温差についていくのに必死になっておりますが、みなさんは体調崩されておりませんか?

さて。今回は「いまも昔も・・・。」というテーマでお話していきたいと思います。ここ何年かで、私たちを取り巻く生活環境も、ライフスタイルも、また、障がいの分野でいうならば、制度も、医療も。大きく変化してきています。
 そんな中で、いまも昔も変わらないもののお話をしたいと思います。

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「この子らを世の光に」という言葉をどこかで聞いたことはないでしょうか? お隣滋賀県の石部にある近江学園の創設者「糸賀一雄」氏の言葉です。  
 この近江学園は、1946(昭和21)年11月に創設された、知的障がい児のための施設でした。この頃の日本は、第二次世界大戦の終戦直後。敗戦して間もなく、生活することも大変な時期でした。同時期に日本国憲法が公布され、その憲法にうたわれる生存権を保障しようと、生活に困っている人には生活保護法、戦争によって親を亡くした孤児たちのために児童福祉法、戦争で体に不自由を抱えた人のための身体障害者福祉法と福祉に関する法律が次々に作られている最中でした。
 糸賀らは法制度もない、自分の生活すら大変な状況で子どもたちの入所施設を作り実践をしていきました。  「この子らが自ら輝く素材そのものであるから、いよいよ磨きをかけて輝かそうというのである。『この子らを世の光に』である。」これが、その前後の言葉を付け加えた文章です。「この子らに光を」ではないのです。
 その前には、どんなに重い障がいを持っていても、かけがえのない存在であり、重症な障がいをもった子でも生産者であることを認めあえる社会を作る。そして、障がい者と感情を共有するためには自分の内面を直視することの大切さについても語っておられます。

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ノーマライゼーションなんていう言葉が出てくる20年も前から、障がいのあるなしに区別されることなく、その人の存在はかけがえのない人であることを語った人でした。そして、支援者として自分自身を知り、自分自身の関わりについて常に見つめなおすという視点もいまも変わらず私たちが忘れてはならないことです。今年は糸賀一雄生誕100周年です。改めてこのことをかみしめたいと思います。

最近は、なんでも簡単に手に入る時代になってしまいました。そんな中で、物の価値や大切さを忘れがちです。物だけでなく、だんだん人の命さえも軽視されるようになってきているのではないかと心配になることもあります。
生活環境は変わっていき、どんどん便利になっている今だからこそ、人として人同士が関わること、支えあうことの意味をしっかりと考えていかなければなればと思います。
 さて。今回は、私自身とても多くの刺激を受ける時期でして、コラムを書くのに素材はたくさんあるけど、伝えられるだけのものがないという状態で非常に悩みました。
 そして、私自身滋賀県の出身で、その滋賀県の福祉に大きな影響を与えられ、今年生誕100周年を迎えられた糸賀一雄氏について少しふれてみよう。と思い、このテーマにしました。
 「この子らに世の光を」か「この子らを世の光に」か。重度の障がいを抱えて生活している憐みではなく、この子ら自身が光輝く、かけがえのない存在であることを説かれた糸賀氏ですが、もともと福祉の実践者ではなく教育の分野で仕事をされていた人でしたが、重症心身障害児施設の創設、障害児教育や障害児支援について日々実践と研究を積み重ねていかれました。

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私たちがいま、福祉を行う上で「個別性」「利用者中心」「自己覚知」なんていう言葉を使ったりしています。
 人というのは、それぞれ個性があり違います。たとえば同じ「女」という性別でも、みんな違いますよね?「自閉症」も「脳性まひ」も「ALS」も同じ診断や障がい名をつけられていても、それぞれ違う生活をしています。
 私たちが生活する上で、自分の生活は誰が決めていますか?もちろん、すべてが思いのまま行くものではありません。どうしても、仕事が入ってしまうこともあるし、子どもさんのおられる方なら子どもの生活に合わせなければならないこともあるでしょう。
 でも、基本的には自分で決めていますよね?小さな事なら、「今テレビでいいとこだけど、のど乾いたしジュース飲みたい。」のどの乾きを少し我慢するか、テレビを諦めるか。
 少し大きくしてみましょう。「来年、家族と旅行に行きたいから○○円貯める!」そのためには、毎月の食費を少し抑えて、毎月買っていた服も季節毎の購入にして…。なんて、自分自身で計画を考えて、選択していくかと思います。
 障がいがあってもなくても、同じです。本人は、選択する権利を持っています。本人にわかる言葉で、わかる提示の仕方でその人の意見を確認しながら、その人自身に目を向けて、その人とともに考えていきます。
 そして、支援者としての視点で自分自身がどんな人で、どういった特徴があるのか。どういった物事のとらえ方をするのか。そういったことを知っていることで、相手との関わり方にも影響します。

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70年近く前に言われたことが、今も変わらず大切にされています。私たちが仕事をしていく上では忘れてはならない考え方なのかもしれません。
 そして、この仕事をしていない人にも「この子らを世の光に」の言葉とともに、彼ら自身がかけがえのない存在であり、そこに存在することで生産性のある、かわらぬ人であるという考えが広まれば、もっと広い心で。誰もが過ごしやすい社会になるのではないでしょうか。

文責:大橋奈緒子